クリニックの広告はどこまで出せる?禁止の8類型と媒体別の範囲を解説

自院のホームページに載せた治療前後の写真や、チラシに書いた「地域No.1」の一言が医療広告ガイドラインに触れていないかどうかは、条文を読むだけでは判断しにくいところです。クリニックの広告で確かめる順序は、広告に当たるかの判定、媒体、書ける事項の範囲、禁止の類型の4段です。

この4段を上から通せば、その表現を出してよいかどうかを自分で判定できます。この記事では、禁止されている8つの類型と違反と判断された表現の例、ホームページからチラシまで媒体ごとに書ける内容の範囲、そして出稿の前に自院の広告を点検する項目を解説します。

目次

クリニックの広告を規制する医療広告ガイドライン

クリニックの広告を規制しているのは、医療法の広告規制と、その具体的な考え方を示した厚生労働省の医療広告ガイドラインです。平成29年に成立した医療法の改正が2018年6月1日に施行され、それまで対象外だった医療機関のウェブサイトも、他の広告媒体と同じ規制の対象になりました。

  • 2018年の医療法改正でホームページとSNSまで規制が広がった
  • 診療科を問わずすべての医療機関に適用される
  • 第三者が出す広告でも医療機関の依頼があれば対象になる

自院の表示が規制に触れるかどうかは、次の4つの手順で判定できます。

  1. 誘引性・特定性・医業や病院に関する内容の3つを満たすかを確認する
  2. その媒体が限定解除の対象になるかを確認する
  3. 広告可能事項の範囲に収まるかを確認する
  4. 禁止される類型に当たる表現がないかを確認する

2018年の医療法改正でホームページとSNSまで規制が広がった

自院のホームページは、広告規制の対象に入っています。医療機関のウェブサイトは、2018年6月に改正が施行されるまでは原則として規制の対象ではなく、厚生労働省の医療機関ホームページガイドラインが関係団体などの自主的な取り組みを促す形になっていました。

変わったきっかけは、美容医療に関する相談件数の増加です。消費者委員会は平成27年7月7日、医療機関のウェブサイトに対する法的な規制が必要である旨の建議を出しました。これを踏まえて平成29年の通常国会で医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)が成立し、2018年6月1日に施行され、医療機関のウェブサイトも他の広告媒体と同じ規制の対象になりました。

このとき、規制の対象そのものが広がっています。それまでの「広告」から、「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」へと変わりました。この定義の下では、院がPRのつもりで作っていない診療案内のページも、患者を誘引する手段としての表示であれば規制の対象に入ります。

ただし、ウェブサイトに広告可能事項の限定をそのままかけると、詳しい診療内容など患者が求める情報の提供が妨げられます。そこで、一定の条件のもとで限定を解除する仕組みが同時に用意されました。

診療科を問わずすべての医療機関に適用される

医療広告の規制は、診療科や施設の規模で分かれていません。医療法が対象と定めているのは、医業と歯科医業、そして病院と診療所に関する広告です。条文に診療科ごとの区別は置かれていないため、自分の診療科は例外だと読める余地はありません。

区別を置かない理由は2つあります。1つは、医療が人の生命・身体に関わるサービスで、不当な広告に誘引されて適当でないサービスを受けたときの被害が、他の分野に比べて著しいことです。

もう1つは、医療の専門性が極めて高く、広告の受け手が文言から実際の質を事前に見分けるのが難しいことです。この2つは、保険診療が中心の内科でも、自由診療が中心の美容クリニックでも変わらない事情であり、規制が診療科を選ばない理由にそのままつながっています。

そのため、広告を出す側には責務が置かれています。患者が広告の内容を適切に理解して治療を選べるよう、客観的で正確な情報の伝達に努めることです。なお、助産師の業務と助産所についても、同じ考え方にもとづいて広告が限定的に制限されています。

第三者が出す広告でも医療機関の依頼があれば対象になる

医療広告の規制を受けるのは、医師や歯科医師、医療機関だけではありません。マスコミや広告代理店、アフィリエイター、患者、一般の人も、広告を出す立場になれば規制の対象です。

アフィリエイターとは、閲覧した人を誘引する目的でブログなどに載せ、その成果に応じて報酬が支払われる形で広告する人を指します。広告代理店や新聞・雑誌・テレビ・出版の業務に携わる人、アフィリエイターに違反があった場合、広告を依頼した医療機関も一緒に指導の対象になります

サイトの制作や広告の運用を外部に任せていても、出す内容を院が確かめる必要は残ります。「制作会社に任せていたので知らなかった」という説明で、院の責任がなくなるわけではないということです。

対象は国内の事業者に限りません。日本国内に向けた広告であれば、外国人や海外の事業者が出す広告も対象で、海外から発送されるダイレクトメールやEメールが含まれます。また、広告と気づかれないように行うステルスマーケティングも、医療機関が広告料などの費用を負担して掲載を依頼している場合には、広告として扱われることがあります。

参考:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」

クリニックの表示が「広告」に当たる条件

規制の対象になるかどうかは、まずその表示が医療法上の「広告」に当たるかで決まります。同じ内容でも、誰に向けて・どんな経緯で出したかによって、広告に当たるものと当たらないものに分かれます。まず一覧で全体をつかみ、続く見出しで判定の中身を確かめる、という順で見ていくのが近道です。

  • 誘引性・特定性・医業の内容の3要件を満たす表示が広告に当たる
  • 院内掲示や学術論文は広告の対象から外れる
  • 医師個人のSNSでも誘引性があれば規制を受ける
表示の例 誘引性 特定性 判定
自院サイトの診療案内 あり あり 広告に当たる
院内の掲示・院内で配るパンフレット なし(受け手は受診中の患者) あり 広告に当たらない
学会・専門誌で発表する学術論文・ポスター・講演 なし 広告に当たらない
職員募集の求人広告 なし あり 広告に当たらない
患者が自分で書いて公表した手記 なし(個人の推薦) あり 広告に当たらない
医療機関の依頼・謝礼にもとづく手記 あり あり 広告に当たる
費用を負担して載せた記事風広告 あり あり 広告に当たる
「これは広告ではありません」と書いた病院名入りの記事 あり あり 広告に当たる
病院名を書かず住所・電話番号で特定できる記事 あり あり(住所・電話番号で特定可能) 広告に当たる

誘引性・特定性・医業の内容の3要件を満たす表示が広告に当たる

この3要件による判定は、冒頭に示した判定手順の1番目にあたります。誘引性・特定性・医業や病院に関する内容のすべてを満たすとき、その表示は広告に当たります。

誘引性とは、患者の受診などを誘引する意図があることです。誘引性があるかどうかは、その表示で広告されている側、つまり医療機関の利益を期待して誘引しているかどうかで見ます。表示を作ったのが誰かではなく、誰の利益に向かっているかを見る点は、先に触れた第三者の広告の判定でも同じです。

特定性とは、医業を提供する人の氏名や名称、あるいは病院・診療所の名称が特定できることです。1つの施設に限らず、複数の提供者や医療機関をまとめて扱う表示も特定性を満たします。系列の複数院をまとめて紹介するページを作る場合も、この要件から逃れられるわけではありません。

この2つに、医業・歯科医業または病院・診療所に関する内容であることを加えた3つがそろったとき、その表示は医療広告として扱われます。逆に言えば、自院の表示を点検するときは、この3つのどれかを欠くかどうかを最初に見れば、以降の点検が必要かどうかを仕分けられます。たとえば院外向けの開業案内は、受診を誘う意図と院の名称と医業の内容がそろうため、3つの要件をすべて満たす典型例です。

院内掲示や学術論文は広告の対象から外れる

院内の掲示や院内で配るパンフレットは、受け取る人が既に受診している患者に限られるため、広告ではなく情報提供や広報として扱われます

待合室の掲示物と、外に配るチラシとでは、同じ内容でも規制上の扱いが変わるということです。院内向けに作った資料をそのまま外の配布物に流用すると、扱いが情報提供から広告へ変わる点には注意が要ります。

学会や専門誌で発表する学術論文・ポスター・講演も、誘引性がないため原則として広告に当たりません。新聞や雑誌の記事も原則として対象外ですが、費用を負担して載せてもらう記事風広告は規制の対象になります。

患者が自分の判断で書いて公表した体験談・手記も、個人が推薦したにすぎず誘引性を満たしません。職員募集の求人広告も、受診を誘引するものではないため対象外です。

ただし、広告に当たらないことは、規制を受けないという意味であって、内容を自由に書けるという意味ではありません。また、学術論文の形を借りて不特定多数にダイレクトメールを送るような場合は、受診を増やす目的と認められれば広告として扱われます。

形式ではなく実態で判定される点に注意が必要です。判定に迷う配布物が出てきたら、誰の手に渡るのか(受診中の患者か、不特定の地域住民か)を見ると、表のどの行に当たるかを絞り込めます。

医師個人のSNSでも誘引性があれば規制を受ける

個人が運営するウェブサイトやSNSの個人ページ、第三者の口コミサイトに体験談が載っていても、医療機関がお金を出すなどして掲載を依頼していなければ、広告としては扱われません。

規制の対象は、あくまで医療機関が関与したものに限られます。一方で、医療機関の依頼にもとづく手記や、医療機関から謝礼を受けている手記は、誘引性があるものとして扱われます。誘引性が認められるのは金銭の謝礼に限らず、広告料などの費用負担その他の便宜を図っている場合も同じです。

医師個人のアカウントによる発信でも、医療機関・医師への特定性と受診への誘引性の両方があれば、医療広告に相当します。院の公式アカウントでないから自由に書ける、という整理にはなりません。院長が個人名で発信していても、プロフィールや投稿から院が特定でき、受診に誘う内容であれば、点検の対象として扱うのが安全です。

自院のウェブサイトに患者の体験談を載せる場合は、広告に当たったうえで、後の見出しで解説する禁止の類型にも該当します。「これは広告ではありません」と書いても病院名が載っていれば、広告として扱われます。

住所や電話番号、サイトのアドレスなど病院名以外の情報で特定できる場合も、扱いは変わりません。SNSと動画の具体的な事例は、厚生労働省の事例解説書が第2章で扱っています。

クリニックの広告に掲載できる事項

医療広告には、書いてよい事項があらかじめ法律で決められています。これを広告可能事項と呼び、限定解除という例外の仕組みを使わないかぎり、書ける範囲はこの事項の中に限られます。

この記事で扱うのは、クリニックの開業・運用の場面で使う頻度が高い事項です。

  • 診療科名・診療時間・連絡先などの基本情報
  • 医師の経歴と学会が認定する専門医資格
  • 保険診療として提供する検査と治療
  • 費用とリスクを併記した自由診療の項目

限定解除がなくても書ける広告可能事項のうち、この記事で扱う範囲は次のとおりです。

  • 医師・歯科医師である旨(第1号)
  • 診療科名(第2号)
  • 病院・診療所の名称、電話番号、所在の場所を表示する事項(第3号)
  • 診療日・診療時間、予約による診療の実施の有無(第4号)
  • 医療従事者の氏名・年齢・性別・役職・略歴(第9号)
  • 提供される医療の内容(第13号)

※法は第1号から第16号までを定めている。第13号の対象は、検査・手術その他の治療の方法のうち厚生労働大臣が定めるものに限られる

診療科名・診療時間・連絡先などの基本情報

診療科名、病院・診療所の名称と電話番号・所在地、診療日・診療時間、予約診療の有無は、限定解除がなくても広告に書けます。名称・電話番号・所在地を定める区分に含まれるのは、管理者の氏名までです。開業案内やチラシの土台になる情報は、この範囲でまかなえます。

広告可能事項は、1つずつの項目を列記するのではなく、「○○に関する事項」とまとめて定める包括規定方式で書かれています。たとえば診療時間なら、書き方の細部まで条文が指定しているのではなく、診療日・診療時間に関する事柄としてまとめて認められている形です。条文の文言と自院が書きたい内容が一対一で対応しない場合は、その事項に「関する」範囲に収まるかで判断します。

表現の手段は文字に限りません。写真・イラスト・映像・音声で表すことも認められています。略号や記号も、社会一般で使われているものや、広告を出す地域で正確に伝わるものであれば使えます。

医師の経歴と学会が認定する専門医資格

医師・歯科医師である旨と、医療従事者の氏名・年齢・性別・役職・略歴は、広告可能事項に含まれます。ただし、日本の免許がない場合は医師である旨を広告できず、外国で医師の資格を持っている旨の広告もできません。

専門性の資格名を広告できるのは、研修体制などの基準に適合するものとして厚生労働大臣に届け出た団体が行う認定に限られます。院長プロフィールに並べている資格名があれば、認定した団体がこの条件を満たすかどうかをまず確かめておきたいところです。

「厚生労働省の認可した○○専門医」という表示は、専門医の認定が学会と専門医機構によるもので厚生労働省の認可ではないため、虚偽広告として扱われます。活動実態のない団体による「○○学会認定医」も、誇大広告の扱いです。

歯科で広告できる専門医資格の細かい扱いは、歯科の広告の規制とNG例を解説した記事で診療科の事情に踏み込んで解説しています。

保険診療として提供する検査と治療

クリニックが広告できる治療の方法は、広告告示が認める保険診療か、医薬品医療機器等法で承認済みの医薬品を用いた治療などに絞られます。承認前の医薬品による治療の内容は、広告可能な事項ではありません。

死亡率・術後生存率も、医療機能情報提供制度で報告が義務づけられた事項以外は広告できません。治療の結果は患者の状態に左右されるところが大きく、適切な選択に役立つ情報と評価できる段階にない、と整理されているためです。

「専門外来」という表記は、広告できる診療科名と誤認を与えるため広告できませんが、「糖尿病」「花粉症」「乳腺検査」のように特定の治療や検査を外来で行う旨は、広告可能な範囲であれば書けます。この3つはガイドラインが挙げている例です。専門外来の看板は出せなくても、自院が力を入れる診療の告知そのものが封じられているわけではありません。

なお、医療機能情報提供制度の対象になっている事項は、専門外来を除き、原則として医療広告でも広告できます。診療案内のページを点検するときは、載せている検査・治療の1つずつについて、保険診療の範囲か、承認された医薬品によるものかを確かめていきます。

費用とリスクを併記した自由診療の項目

自由診療とは、医療保険各法などの給付の対象にならない検査・手術その他の治療のことです。自由診療の治療内容を広告に書くには、後の見出しで解説する限定解除の要件のうち、通常必要とされる治療内容と費用などの情報提供と、主なリスク・副作用の情報提供の2つを満たす必要があります。

自由診療は「費用とリスクを書けば載せられる」のではなく、限定解除が使える媒体で、治療の内容・標準的な費用・治療の期間・回数とリスク・副作用の情報をそろえて初めて書けます。治療の名称と最低限の内容・費用だけを見せて誤解させ、不当に誘引する形は認められません。

標準的な費用がはっきりしない場合は、発生しやすい追加費用を含めた最低金額から最高金額までの範囲で示します。料金のページを作り込む前に、この4つの情報が治療の紹介と同じ場所に並ぶ設計になっているかを確かめておくと、後の直しが小さく済みます。

承認前の医薬品を使う自由診療では、書く項目がさらに増えます。未承認である旨、入手経路、同じ成分・性能の国内承認品の有無、そして医薬品副作用被害救済制度などの救済の対象にならない旨までの明示が必要です。自由診療の広告表現は、インプラント広告の出し方を解説した記事でも扱っています。

参考:厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」

クリニックの広告で禁止されている8つの類型

医療法・医療法施行規則と医療広告ガイドラインは、書いてはならない広告の類型を定めています。根拠の置き場所は類型ごとに違い、虚偽広告は医療法の条文そのもの、比較優良・誇大・公序良俗は同じ条文の別の号、体験談と治療前後の写真は医療法施行規則です。

この記事では、これらをガイドラインの整理に沿って8つの類型として解説します。なお、この見出しから先に出てくる具体的な言い回しは、いずれも禁止される表現の例であり、広告文の見本ではありません。

  • 虚偽広告
  • 比較優良広告
  • 誇大広告
  • 公序良俗に反する内容の広告
  • 広告可能事項以外の広告
  • 治療内容・効果に関する体験談
  • 説明を付さない治療前後の写真
  • その他(品位を損ねる内容・他法令違反)
類型 定義 該当する表現の例
虚偽広告 事実と違う内容で受診機会を失わせるおそれがあるもの 「絶対安全な手術です!」
比較優良広告 他院と比べて自院が優良である旨を示すもの 「当院は県内一の医師数を誇ります。」
誇大広告 事実を不当に誇張し、または人を誤認させるもの 「比較的安全な手術です。」
公序良俗に反する内容の広告 わいせつ・残虐な図画や映像、差別を助長する表現
広告可能事項以外の広告 法と広告告示が認めた事項の外を書くもの 「専門外来」
体験談 患者の主観・伝聞にもとづく治療内容・効果の体験談 「〜が治りました」
治療前後の写真 説明を付さず誤認させるおそれがあるビフォーアフター写真 写真のみで説明なし
その他(品位を損ねる内容・他法令違反) 費用の過度な強調や他法令に触れる内容 「今なら○円でキャンペーン実施中!」

虚偽広告

事実と異なる内容の広告は、8つの類型の中で唯一、中止命令を経ずに罰則がかかる直接罰の対象です。効果や安全性を保証する言い方は、規制のうえで最も重い扱いを受けます。

虚偽広告が禁じられるのは、事実と大きく違う情報が患者から適切な受診の機会を奪い、適切でない医療につながるおそれがあるためです。「絶対安全な手術です!」は、医学上あり得ないため虚偽に当たります。あたかも効果があるように見せるため加工・修正した術前術後の写真も、虚偽広告として扱われます。

書いた時点の意図だけでなく、実態との食い違いも判定の対象です。治療後に定期的な処置が必要なのに「一日で全ての治療が終了します」と表示すれば虚偽になり、研究の実態がないのに「○○研究所を併設しています」と書く場合も同じです。

誇張したつもりのない紹介文でも、実態が追いついていなければこの類型に入ります。開設時に書いた設備や体制の記述が、その後の変更で現状と離れていないかも、同じ観点で確かめる対象です。

比較優良広告

他の医療機関と自院を比べて、規模・人員配置・医療の内容で自院が優れていると示す広告は、たとえ事実であっても禁止されます。事実なら書けるだろう、という感覚が通用しない類型です。

事実でも禁止されるのは、優秀性について著しい誤解を与えるおそれがあるためです。「日本一」「No.1」「最高」のような最上級の言い方は、客観的な事実であっても禁止される表現に当たります。著名人との関係を強調する言い方も、他院より著しく優れていると誤解させるおそれがあるため、比較優良広告として扱われます。

一方、最上級を除く客観的な事実の記載までは妨げられていません。ただし、求められれば裏づけとなる合理的な根拠を示し、客観的に実証できる状態にしておく必要があります。調査結果を引用するときは、出典、調査の実施主体、調査の範囲、実施時期をあわせて書きます。

実績を伝えたい場合は、他院と比べる形ではなく、自院の事実の提示にとどめるのが基本です。医師数や手術件数のような数字も、比較の言葉を添えない事実の提示であれば書けますが、その場合も求めに応じて根拠を示せる状態にしておくことが前提です。

誇大広告

虚偽とまでは言えなくても、事実を不当に大げさに見せたり誤解させたりする広告は、誇大広告として禁止されます。嘘を書いていないつもりでも該当し得る、範囲の広い類型です。

「人を誤認させる」の判定は緩やかです。一般の人が受け取る印象や期待と実際の内容がずれていると常識的に言えれば足り、実際に誤解した人がいたという結果までは要りません。

「知事の許可を取得した病院です!」も、開設に必要なだけの許可をあたかも特別な認定であるかのように打ち出しており、誇大に当たります。

見落としやすいのは、更新漏れです。「医師数○名(○年○月現在)」という表示は、書いた時点で事実でも、その後に医師数が大きく減れば誇大広告として扱われます。

開設時に作ったまま何年も触っていないページは、この観点で読み直す必要があります。医師数に限らず、診療時間や料金のような変わり得る記載も、実態に合わせて直す運用までが、広告の管理の一部です。

このほか、「比較的安全な手術です。」は何と比べて安全かが不明なため誇大に当たります。科学的な裏づけの乏しい文献やテレビの健康番組を引いた治療の紹介も、それだけでは客観的な事実と証明できないため同じ扱いです。

公序良俗に反する内容の広告

わいせつな図画や映像、残虐な表現、差別を助長する表現を使った広告は、公序良俗に反する内容として禁止されています。広告の文言だけでなく、使う画像・映像の選び方にかかわる類型です。

対象は直接的な表現に限りません。名称やキャッチフレーズによる暗示的・間接的な見せ方も規制の対象に含まれます。

また、この類型に当たるかどうか以前に、医療広告としてふさわしくないものは、禁止の条文がなくても厳に慎むべきとされています。素材を選ぶ段階で、疑わしいものを外しておくのが確実です。制作会社からデザイン案を受け取る立場でも、当たるおそれのある素材はこの段階で差し戻す、という関わり方ができます。

広告可能事項以外の広告

法と広告告示が認めた事項の外にあることは、原則として何も書けません。個別の表現の良し悪し以前に、範囲の外かどうかで判定される類型です。

広告可能事項は、患者の治療選択に役立ち、客観的に評価できて後から検証できる事項であることを前提に定められています。この前提を満たさない「専門外来」の表記、死亡率・術後生存率、承認前の医薬品による治療の内容は、いずれも広告可能な事項ではありません。

例外は、患者が適切に選べる妨げになるおそれが少ない場合として省令が定める場合、つまり限定解除だけです。裏を返すと、限定解除が使えない媒体では、書ける事項がこの範囲まで狭くなります。チラシや看板の原稿を作るときにまず確かめるのは、個々の言い回しよりも先に、この範囲に収まっているかどうかです。

治療内容・効果に関する体験談

患者本人の体験や家族からの伝聞にもとづいて、治療の内容や効果を語る体験談は、広告として認められません。内容が広告できる範囲に収まっていても、体験談の形をとった時点で書けません。

禁止の理由は、患者の状態によって感想は当然に異なり、読んだ人に誤解を与えるおそれがあるためです。自院のサイトに「患者様の声」として治療の感想を載せる運用は、この類型に正面から当たります。

ただし、規制の対象は医療機関が誘引を目的として紹介するものです。個人のサイトやSNSの個人ページ、第三者が運営する口コミサイトに載った体験談は、医療機関が費用の負担などの便宜を図って掲載を頼んでいなければ、広告に当たりません。自院が関与していない口コミまで削除して回る義務はないということです。

点検の対象は「患者様の声」のページに限りません。スタッフのブログや院内報のウェブ掲載に患者の感想の紹介が紛れ込んでいないかも、同じ基準で見ていきます。

説明を付さない治療前後の写真

いわゆるビフォーアフター写真は、治療内容・費用と主なリスク・副作用の詳しい説明を付けなければ広告に載せられません。患者の状態によって結果は当然に異なるため、誤認させるおそれのある写真は認められません。

説明を付ける場合も、置き場所に条件があります。リンク先のページに逃がすことも、利点の説明より極端に小さい文字にすることも認められません。写真と同じ場所で、同じ読みやすさで示す必要があります。

さらに、媒体の条件もあります。写真が示す治療効果は広告可能事項に含まれないため、限定解除の対象にならない媒体では、説明を付けても術前術後の写真そのものを掲載できません。

撮影の条件や被写体の状態を変えて撮った写真で効果を強調する場合は、誇大広告として扱われます。写真を扱う機会の多い美容分野の事情は、美容クリニックの広告手法を解説した記事で詳しく扱っています。

その他(品位を損ねる内容・他法令違反)

ガイドラインはこのほかに、品位を損ねる内容の広告と、他の法令や他法令の広告ガイドラインが禁じる内容の広告を挙げています。

前半の品位を損ねる内容の代表例は、費用の強調です。「今なら○円でキャンペーン実施中!」のような表示や、「無料相談をされた方全員に○○をプレゼント」のように医療の内容と直接関係しない事項で誘う表示が、ここに当たります。ガイドラインは、ふざけたもの、ドタバタ的な表現による広告も同じ例に挙げています。

後半の他法令違反には、複数の法律がかかわります。医療法を守っていても、医薬品医療機器等法・健康増進法・景表法・不正競争防止法のいずれかに触れれば、その広告は出せません。医薬品医療機器等法第66条第1項は医薬品・医療機器の名称・効能効果・性能の虚偽・誇大広告を、同法第68条は承認前の医薬品・医療機器の広告を禁じており、医薬品の商品名も広告できません。

関係する法律はほかにもあります。

健康増進法第31条第1項が禁じているのは、食品の健康保持増進効果について著しく事実と違う表示です。景表法第5条は品質や取引条件を実際より著しく優良・有利に見せて不当に誘引する表示を、不正競争防止法第21条第2項は不正の目的による誤認表示・虚偽表示を禁じています。

他法令に違反した場合や他法令で処分を受けた場合でも、それを理由に医療法の広告違反が免責されることはありません。プレゼントや割引の企画を立てるときは、医療法の観点に加えて、こうした別の法律に触れないかまで含めて確かめる必要があります。

クリニックの広告が違反と判断される具体例

前の見出しで挙げた類型が、実際の表現でどう判定されるかを見ていきます。ここで引用する言い回しは、すべてガイドラインと事例解説書が示す禁止される例です。

自院のサイト・チラシに似た表現がないかを照らす材料として使ってみてください。字面がそのまま一致していなくても、同じ趣旨を伝える形になっていれば同じ判定になり得るため、言い回しではなく何を伝えているかで照らすのがこつです。

  • 「絶対に安全な手術です」と効果を保証する表現
  • 「地域No.1の実績」と他院より優れているとする言い回し
  • 根拠を示さずに「満足度98%」と示す数値
  • 「〜が治りました」という患者の体験談
  • 説明を付けずに並べた治療前後の写真
  • 「今なら〇円」と費用を強調する見せ方

「絶対に安全な手術です」と効果を保証する表現

「絶対安全な手術です!」「どんなに難しい症例でも必ず成功します」は、いずれも虚偽広告の例として挙げられています。絶対に安全な手術は医学上あり得ないため、事実と異なる広告と判定されます。

「絶対」「必ず」を含む言い方は、虚偽広告として直接罰の対象になり得るため、自院のサイトからまず探して外す表現です。事例解説書の事例1にも、「当院の治療はどのような症例でも絶対安全です!」の形の掲載例が違反として収められています。

患者の不安を和らげたい意図で書いた一文でも、安全の保証という形をとった時点でこの類型に入ります。伝えたいことが安全への配慮なのであれば、保証の言い切りではなく、体制や説明の事実を書く方向で組み立てるのが出発点です。

「地域No.1の実績」と他院より優れているとする言い回し

「当院は県内一の医師数を誇ります。」「肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。」は、比較優良広告の例です。「著名人も当院で治療を受けております。」のように著名人との関係を強調する形も、同じ類型に当たります。

「日本一」「No.1」「最高」のような最上級の表現は、地域を限っても、客観的な事実であっても禁止されます。県内一・地域No.1のように範囲を狭めれば書けるという誤解が残りやすいところですが、地域を限った最上級も対象です。

事例解説書の事例5は、規模・人員配置・医療内容のそれぞれを最上級で比べた掲載例を違反として示しています。

自院の強みを示したいときに最上級へ寄せる発想そのものが、点検の対象です。新規の広告だけでなく、開業時から残っている紹介文にこの型の言い回しが紛れていないかも、あわせて確かめる対象です。

根拠を示さずに「満足度98%」と示す数値

「○%の満足度」のように、データの根拠(具体的な調査の方法)を示さず結果だけを見せる表示は、虚偽広告として扱われます。ごく限られた患者だけを対象にした調査や、謝金を払って意図的に誘導した調査の結果も、公正なデータとは言えないため虚偽の扱いです。

満足度の数値そのものが禁止されているのではなく、根拠と調査方法を示さないことが問題です。その調査が誰を対象に、いつ、どんな方法で行われたかまで示せるかどうかが分かれ目です。事例解説書の事例2は、根拠を示さず患者満足度だけを載せた掲載例を違反として挙げています。

院内で集めたアンケートでも、対象の絞り込みや謝礼の有無によっては公正なデータと見なされないおそれがあり、載せるつもりがあるなら集め方から設計しておくのが確実です。アンケートを取って数値を載せる場合は、載せる前に調査の条件まで併記できるかを確かめる、という手順に落とせば迷いません。

「〜が治りました」という患者の体験談

医療機関が誘引を目的として紹介する、治療内容や効果の主観的な体験談は、医療広告として認められません。内容が広告できる範囲に収まっていても不可です。

事例解説書の事例16には、「納得して治療を受けることができました」という形の体験談の掲載例が違反として収められています。症状が治ったという言い方でなくても、治療の内容・効果に触れる感想であれば対象です。

判定を分けるのは掲載場所と関与です。自院のウェブサイトに載せる治療内容・効果の体験談は広告に当たったうえで禁止される一方、第三者のサイトに患者が自発的に書いた口コミは、自院が便宜を図っていなければ広告に当たりません。既に「患者様の声」のページを持っている場合は、治療の内容・効果に触れる記述がないかを1件ずつ確かめる必要があります。

説明を付けずに並べた治療前後の写真

術前・術後の写真やイラストだけを並べて説明が足りない表示は、禁止の具体例として挙げられています。手術に限らず、手術以外の処置の前後写真も対象です。事例解説書の事例22は、ビフォーアフター写真だけが載り説明が一切ない掲載例を示しています。

写真を載せるなら、詳しい説明を写真と同じ場所に、読みやすい大きさで添える必要があります。リンク先への逃がしと極端に小さい文字は、どちらも認められません。

あわせて、治療効果は広告可能事項ではないため、限定解除の対象でない媒体では写真そのものを載せられない点も、掲載前に確かめる条件です。写真と説明と媒体の3点がそろって、はじめて掲載の土台ができます。

「今なら〇円」と費用を強調する見せ方

「今なら○円でキャンペーン実施中!」「期間限定で○○療法を50%オフで提供しています」「○○100,000円50,000円」「○○治療し放題プラン」は、いずれも費用を強調した広告として品位を損ねる内容の例に挙げられています。

割引やキャンペーンの訴求は、その見せ方自体が品位を損ねる類型に当たります。さらに、大きく出した値段が5カ所以上まとめて受けたときの費用で、1カ所だと倍近くかかるような表示は、小さな注釈を付けても誇大広告として扱われる場合がある点にも注意が必要です。

事例解説書の事例34も、症例モニターとして受ける場合の割引を強調した掲載例を違反として示しています。期間限定の価格訴求は他の業界では広く使われる手法であるだけに、医療広告では使えないことを押さえておく必要があります。

参考:厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」

クリニックの広告を出す前に点検する項目

ここまでの規制を、自院のホームページ・印刷物・広告文に当てはめて確かめる手順に落とします。点検の項目は6つで、上から順に確かめると、その表示が規制に触れるかどうかを一通り判定できます。

☐ 【広告該当性】誘引性・特定性・医業や病院に関する内容の3つを満たすか

☐ 【媒体】限定解除の対象になる媒体か(患者が自ら求めて手に入れる情報を載せるものか)

☐ 【広告可能事項】法第6条の5第3項各号と広告告示の範囲に収まっているか

☐ 【禁止の類型】虚偽・比較優良・誇大・公序良俗・広告可能事項以外・体験談・治療前後の写真に当たる表現がないか

☐ 【限定解除の要件】問い合わせ先の明示、自由診療の内容・費用・期間・回数、主なリスク・副作用を書いているか

☐ 【記載の更新日】医師数・診療時間・料金が実態と合っているか

点検1は、その表示が広告に当たるかの確認です。学術論文や学会発表、院内の掲示と院内で配るパンフレット、職員募集の求人広告は広告に当たらないため、これらは以降の点検の対象から外せます。

点検2は媒体の確認です。バナー広告、検索結果にスポンサーとして出るもの、費用を払って上位に出すものは限定解除の対象にならないため、書ける範囲が広告可能事項に限られます。点検3は、点検2で絞った書ける範囲に、実際の記載が収まっているかの確認です。

点検4は、虚偽・比較優良・誇大・公序良俗・広告可能事項以外・体験談・治療前後の写真の各類型に当たる表現がないかの確認です。前の見出しで挙げた具体例と照らしながら、1ページずつ表現を拾っていきます。

点検5では、限定解除を使う場合の要件がそろっているかを見ます。要件の中身は次の見出しで解説します。

点検6は記載の更新日です。「医師数○名(○年○月現在)」のような表示は、実態とずれれば誇大広告になり得るため、随時の更新が要ります。

点検の単位は、サイト全体ではなくページと印刷物の1点ごとです。ホームページ・パンフレット・チラシ・広告文をそれぞれ1件ずつこの6項目に通し、判定に迷った表現だけを書き出しておくと、後の相談にもそのまま使えます。

迷う表現が残った場合の相談先は、都道府県・保健所設置市・特別区です。広告を出す側への相談支援と窓口の明確化が定められています。窓口の名称や連絡先は自治体ごとに異なるため、自院の所在地の自治体で確かめてみてください。

クリニックの広告可能事項が限定解除される要件

限定解除は、ウェブサイトのように患者が自分から求めて見る媒体に限って認められる例外です。4つの要件を満たすと広告可能事項の限定が外れ、書ける範囲が広がります。要件はチェックリストの形でも示します。

  • 患者が自ら求めて閲覧する媒体であること
  • 問い合わせ先の分かりやすい表示
  • 自由診療の治療内容・費用・期間・回数の記載
  • 自由診療の主なリスクと副作用の明示
  • 限定解除が認められた場合に広告できる範囲

☐ 要件1. 患者が自ら求めて手に入れる情報を載せる媒体か(ウェブサイト・メルマガ・求めに応じて送るパンフレット)

☐ 要件2. 問い合わせ先(電話番号・Eメールアドレス)を分かりやすく示しているか

☐ 要件3. 自由診療の通常必要とされる治療の内容・標準的な費用・治療の期間・回数を書いているか

☐ 要件4. 自由診療の主なリスク・副作用を書いているか

※要件3・4は自由診療の情報を出す場合のみ

患者が自ら求めて閲覧する媒体であること

限定解除が使えるのは、患者が自ら求めて手に入れる情報を載せるウェブサイトと、これに準じる広告だけです。該当し得る媒体として挙げられているのは、ウェブサイトのほか、メルマガ、患者の求めに応じて送るパンフレットです。

ウェブサイトがこの扱いを受けるのは、もともと一般の人が受動的に目にする認知性がなく、その理由で従来は広告規制の対象外だった媒体だからです。患者が検索して自分から開きに来る、という性質が要件の根拠になっています。読者の側から見れば、自分で調べに来た人に対しては詳しい情報を出せるようにし、こちらから押しかける広告では範囲を絞る、という線の引き方です。

同じインターネット上でも、バナー広告や、検索結果にスポンサーとして出るもの、費用を払って検索結果の上位に表示させたものは、この要件を満たしません。限定解除が成立するのは要件1から4のすべてを満たすときで、要件3・4がかかるのは自由診療の情報を出す場合だけです。自院で使っている媒体を書き出し、要件1に当たるかどうかで2つに分けておくと、以降の要件の点検はウェブサイト側だけで済みます。

問い合わせ先の分かりやすい表示

問い合わせ先は、載せていること自体ではなく、表示した情報のそばで確かめられる分かりやすさまでが求められます。要件2が指す問い合わせ先とは、電話番号やEメールアドレスなどです。患者が疑問をその場で確かめられる状態にしておく、という趣旨です。

この要件が置かれているのは、患者が疑問をその場で確かめられる状態を作り、患者と医療機関のあいだの情報の差を小さくするためです。サイトのフッターや診療案内のページなど、読んだ人がすぐ見つけられる場所に置くことが求められます。

事例解説書の事例27は、問い合わせ先を明示しておらず限定解除の要件を満たしていない掲載例を示しています。自由診療の内容をどれだけ丁寧に書いていても、この1点が欠けるだけで限定解除の土台が崩れるため、点検の優先度は高い項目です。

自由診療の治療内容・費用・期間・回数の記載

自由診療の情報を出す場合は、通常必要とされる治療の内容、標準的な費用、治療の期間、回数の4つを書く必要があります。自由診療は内容も費用も医療機関ごとに大きく違い、料金のトラブルが起きやすいため、この要件が置かれています。

標準的な費用がはっきりしないときは、発生しやすい追加費用を含めて、最低金額から最高金額までの範囲で示します。置き場所の条件は治療前後の写真の説明と同じで、リンク先のページに逃がすことも、利点の説明より極端に小さい文字にすることも認められません。料金表のページだけを整えて、治療を紹介するページに費用が無い形も、患者から見れば同じ画面で確かめられないため、この趣旨に沿いません。

自院の自由診療のページにこの4つがそろっているかは、限定解除を使ううえでの前提です。自由診療の広告表現の組み立ては、ホワイトニング広告の規制ルールを解説した記事でも扱っています。

自由診療の主なリスクと副作用の明示

利点だけが強調されてリスクの情報が乏しいと、受ける人が適切に選べなくなるおそれがあります。要件4の主なリスク・副作用の明示は、費用の情報とあわせて必須とされています。

承認前の医薬品を使う自由診療では、明示する項目が増えます。承認を得ていないものである旨を示し、医師の個人輸入によるものならその旨を書いたうえで、厚生労働省の「個人輸入において注意すべき医薬品等について」のページを案内します。

さらに、同じ成分・性能を持つ国内承認品があるかどうかと、医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度の救済の対象にならない旨までが必要です。これらは自由診療の中でも未承認の医薬品などを使う場合にだけかかる条件のため、自院の診療内容に当てはまるかどうかを先に確かめると、点検の範囲を絞れます。

限定解除が認められた場合に広告できる範囲

4つの要件を満たすと広告可能事項の限定が外れ、他の事項も書けるようになりますが、虚偽・比較優良・誇大・体験談・治療前後の写真の禁止はそのまま残ります。限定解除は「何でも書ける」状態を作る仕組みではありません。

外れるのは、広告可能事項の限定だけです。広告の内容と方法にかかる基準は限定解除の後も適用され続け、内容が虚偽にわたってはならない点も変わりません。治療効果は広告可能事項ではないため、限定解除の対象でない媒体では術前術後の写真を載せられないという線引きも、この構造から来ています。

限定解除の要件の書き方が不適切だった事例は、事例解説書の「限定解除要件の記載が不適切な事例」に事例27から31までの5件がまとまっています。扱われているのは、「専門外来」「診療科名」「専門性資格」「手術件数」「新聞や雑誌等で紹介された旨」の限定解除と、自由診療の限定解除の全体概要です。

残りは、未承認医薬品等を用いた自由診療と、承認された効能・効果と異なる目的で医薬品等を用いた自由診療(GLP-1関連を含む)を扱っています。自院のサイトで限定解除を使っている箇所を整えるときの、照合先として使えます。

クリニックの広告で媒体ごとに違う規制のかかり方

同じ内容でも、載せる媒体によって書ける範囲は変わります。分かれ目は、その媒体で限定解除が使えるかどうかです。

媒体別の扱いを先に一覧で示し、続くそれぞれの見出しで個別に解説します。いま使っている媒体と、これから出稿を考えている媒体の行から確かめてみてください。

  • ホームページは限定解除で書ける範囲が広がる
  • リスティング広告は広告文もリンク先も規制される
  • チラシ・ポスティングは広告可能事項の範囲に限られる
  • 看板・交通広告は限定解除を使えない
  • SNSは投稿でも誘引性があれば広告になる
  • ポータルサイトは掲載枠ごとに書ける内容が変わる
媒体 限定解除 書ける内容 書けない内容
ホームページ 使える(4要件を満たせば) 広告可能事項+自由診療の内容・費用・期間・回数・リスク 虚偽・比較優良・誇大・体験談・説明のない治療前後の写真
メルマガ、求めに応じて送るパンフレット 使える 同上 同上
リスティング広告 使えない 広告可能事項の範囲だけ 広告可能事項の外(自由診療の詳細・治療効果)
バナー・ディスプレイ広告 使えない 広告可能事項の範囲だけ 同上
チラシ・ポスティング 該当媒体に挙げられていない 広告可能事項の範囲だけ 同上
看板・交通広告 該当媒体に挙げられていない 広告可能事項の範囲だけ 同上
SNS(医療機関のアカウント) 原則使える(一般的なウェブサイト等の扱い) 広告可能事項+要件を満たせば自由診療の詳細 体験談・説明のない治療前後の写真
ポータルサイト 掲載枠によって分かれる 枠が自ら求めて手に入れる情報なら要件を満たせば限定を外せる 枠が広告扱いなら広告可能事項の外

ホームページは限定解除で書ける範囲が広がる

自院のホームページは、4つの要件を満たせば広告可能事項の限定が外れ、媒体の中で最も広く書ける場所になります。Eメールやインターネット上の広告など、情報処理の用に供する機器によるものは規制の対象媒体ですが、そのうちウェブサイトは限定解除の要件1に該当し得る媒体です。

限定が外れても、虚偽・比較優良・誇大・体験談・治療前後の写真の禁止は残ります。内容と方法の基準は適用され続けるため、広く書ける媒体であることと、自由に書ける媒体であることは別です。

ウェブサイトの違反事例は、事例解説書の第1章にまとまっています。診療の詳しい説明を出す場所として最も頼れる媒体だからこそ、点検の中心もホームページに置くのが自然です。更新の頻度が高い媒体でもあるため、ページを足すたびに、足した部分だけでも6項目の点検に通す運用が現実的です。

リスティング広告は広告文もリンク先も規制される

検索結果にスポンサーとして出るものと、費用を払って検索結果の上位に出したものは、限定解除の要件1を満たしません。事例解説書は、リスティング広告が広告可能事項の範囲を超えて広告できないことを名指しで示しています。バナー広告も同じ扱いです。

リスティング広告では、広告文だけでなくリンク先のページも広告可能事項の範囲に収める必要があります。広告文を短く整えても、飛び先のページに自由診療の詳細や治療効果が書かれていれば、そこが規制に触れます。広告から自由診療の紹介ページへ直接つなぐ導線を組んでいる場合は、この点の見直しが欠かせません。

法令の規制とは別に、媒体側の制限もあります。Google広告は、ヘルスケア関連のコンテンツについて掲載が一切認められないものがあるとポリシーで定めています。審査に通るかどうかと、医療法に適合するかどうかは別の問題です。

チラシ・ポスティングは広告可能事項の範囲に限られる

チラシ・パンフレットの類は、ダイレクトメールやファクシミリを含めて規制の対象媒体です。このうち限定解除の要件1に該当し得るのは、患者の求めに応じて送るパンフレットだけです。

求めに応じて送るものではない、配布型のチラシ・ポスティングは、限定解除の該当媒体に挙げられておらず、書ける内容が広告可能事項の範囲に限られます。これはガイドラインがチラシを名指しで禁じているのではなく、要件1に該当し得る媒体の列挙に含まれていないことによる判定です。

実務上は、チラシに自由診療の詳細を載せない線引きで運用します。同じ1枚の紙でも、患者から資料請求を受けて送るのか、地域に一斉に配るのかで扱いが分かれる点が、この媒体の判断の中心です。

看板・交通広告は限定解除を使えない

ポスター、看板(プラカードや建物・電車・自動車に記載されたものを含む)、ネオンサイン、アドバルーンも規制の対象媒体です。

看板・交通広告は限定解除の要件1に該当し得る媒体として挙げられておらず、チラシと同じく列挙に含まれないことによる判定で、書ける範囲は広告可能事項に限られます。

看板に載せる情報は、診療科名・名称・連絡先・診療時間といった基本情報に絞るのが確実です。広告可能とされた事項の外は、何人も書けません。

看板に載せるURLやEメールアドレスも、暗示的・間接的な見せ方として規制の対象に含まれる点には注意が要ります。看板そのものは基本情報に絞り、詳しい説明は限定解除の使えるホームページで受ける、という役割分担が自然な形です。

SNSは投稿でも誘引性があれば広告になる

医療機関が運営するアカウントの投稿は、誘引性・特定性・医業に関する内容の3つを満たせば広告として扱われます。日々の投稿だからと規制の外に置かず、広告と同じ基準で点検する対象です。

一方、SNSの個人ページに載った体験談は、医療機関から便宜の提供を受けて掲載されたものでなければ、広告には当たりません。広告と気づかれない形のステルスマーケティングも、便宜の提供があれば広告として扱われることがあります。つまり、個人アカウントと医療機関のアカウントで扱いが分かれます。

限定解除については、リスティング広告とバナー広告を除く一般的なウェブサイトなどが原則として要件1を満たす扱いです。SNSと動画の違反事例は、事例解説書の第2章が具体的に扱っています。投稿を日常的に重ねる媒体だからこそ、投稿前の点検を運用に組み込んでおくと、後から直す手間が減ります。

ポータルサイトは掲載枠ごとに書ける内容が変わる

患者が自分でダウンロードする医療機関のアプリは、医療機関のウェブサイトと同じく規制の対象です。ポータルサイトへの掲載も、その枠が患者が自ら求めて手に入れる情報を表示するものであれば、限定解除の要件を満たすことで限定を外せます。枠が広告としての性質を持つ場合は、広告可能事項の範囲に限られます。

掲載を依頼した内容の責任は、運営会社だけでなく依頼した院にも及びます。違反があったときは、サイトの運営会社や広告を作った代理店にも是正命令・罰則がかかることがあり、依頼を受けた側にも内容が法と指針に反していないかを確かめる責任があります。契約を結ぶ前に、掲載枠の性質と原稿の中身を確かめておくと安全です。

クリニックの広告が違反したときの行政指導と罰則

違反が見つかった場合、いきなり処罰されるわけではなく、調査から処分までは段階を踏んで進みます。流れは次の6段で、早い段階で対応するほど軽く収まる構造になっています。

  • 都道府県の立入検査と報告命令から始まる
  • 従わなければ広告の中止命令・是正命令が出る
  • 命令に違反すると拘禁刑または罰金が科される
  • 悪質な場合は開設許可の取消しに至る
  • 任意の調査(説明を求める・資料の提出を受ける)
  • 報告命令・立入検査(医療法第6条の8第1項)
  • 行政指導(広告の中止・内容の是正、違反広告物の回収・廃棄)
  • 中止命令・是正命令(医療法第6条の8第2項、弁明の機会の付与を経て発出)
  • 罰則(6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)と事例の公表
  • 開設許可の取消し・期間を定めた閉鎖命令(医療法第29条第1項第5号に当たる場合)

都道府県の立入検査と報告命令から始まる

違反が疑われる広告が見つかっても、最初に来るのは立入検査ではなく、説明を求めるなどの任意の調査です。この段階で説明し、必要な資料を出して対応すれば、手続はそれ以上重くなりません。

任意の調査に応じない場合や、説明・提出書類に疑いが残る場合に、医療法第6条の8第1項にもとづく報告命令・立入検査へ進みます。行うのは都道府県知事、保健所設置市の市長、特別区の区長です。

立入検査で見られるのは広告物そのものにとどまらず、作成段階の案、契約書、診療録など、内容が正確かどうかを確かめるために必要な書類と物件も対象です。外注先とのやり取りも、確認の範囲に入ります。

この段階にも罰則があります。報告をしない、虚偽の報告をする、立入検査を拒む・妨げる・逃げるといった対応をとると、20万円以下の罰金が適用されます。調査の連絡を受けたときに指摘された広告物と制作時の資料をすぐ出せるよう、外注先との契約書や原稿のやり取りを残しておくことも備えの1つです。

従わなければ広告の中止命令・是正命令が出る

行政指導の段階では、広告の中止と内容の是正が求められ、必要に応じて違反した広告物の回収・廃棄まで指導されます。指導に従わない場合や違反を繰り返す悪質な場合には、医療法第6条の8第2項にもとづき、期限を定めた中止命令・是正命令が出されます。

命令は不利益処分に当たるため、実施の前に行政手続法第13条の弁明の機会が付与されます。命令の宛先は、病院・診療所なら開設者または管理者、広告代理店・雑誌社・新聞社・放送局ならその代表者です。医療機関以外の広告の作成者・掲載者にも、任意の調査と指導は及びます。

もう1つ見落とせないのが、事例の公表です。指導に従わず命令や刑事告発に至った場合、原則として事例が公表されます。

地域で診療を続けるクリニックにとって、公表の影響は罰金額の大小にとどまりません。指導の段階で直すことには、その意味があります。

命令に違反すると拘禁刑または罰金が科される

中止命令・是正命令に従わない場合は、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されます(医療法第87条第1項第3号)

なお、ガイドライン本体には「懲役」の表記が残っていますが、懲役を拘禁刑に改めた刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)が2025年6月1日に施行されており、条文の現行表記は拘禁刑です。刑法の主刑には拘禁刑が含まれ、有期拘禁刑は1月以上20年以下と定められています。

虚偽広告は例外的に重く、命令を経ずに罰則がかかる直接罰の対象です。虚偽広告を出した者が中止・是正の行政指導に応じない場合は、刑事訴訟法第239条第2項の規定により、司法警察員に対する書面での告発が検討されます。

報告命令違反・立入検査の拒否に適用されるのは、前の見出しでも触れた20万円以下の罰金(医療法第89条第1項第2号)です。罰則の金額だけを見ると大きくないように映りますが、刑事罰である以上、科されたという事実そのものが院の信用に直結します。

悪質な場合は開設許可の取消しに至る

悪質な違反広告に対しては、告発のほかに行政処分が検討されます。行政処分の内容は、医療法第29条第1項第5号に当たるとして行われる開設許可の取消し、または期間を定めた閉鎖命令で、院の存続そのものに関わります。病院・診療所については、医療法第28条にもとづく管理者変更命令も定められた行政処分の1つです。

第29条第1項第5号の条文は「開設者又は設置者に犯罪又は医事に関する不正の行為があつたとき」というもので、条文自体が広告違反を名指ししているわけではありません。ガイドラインが、悪質な違反広告をこの条文に当てはめて示しているにとどまります。広告違反がただちに取消しへ直結するわけではありませんが、行き着く先にこの処分があることは、規制全体の重さを示しています。

参考:
e-Gov法令検索「医療法」
e-Gov法令検索「刑法」

クリニックが出せるWeb広告の種類

規制の範囲で使えるWeb広告には、複数の選択肢があります。媒体を選ぶ軸は、届けたい相手がいま受診先を探している段階か、その手前の段階かです。届く相手と費用の形、そして規制上の扱いを媒体ごとに整理します。

  • リスティング広告:受診先を探している人に届く
  • ディスプレイ広告:症状を自覚し始めた層に広く表示される
  • SNS広告:地域と年代を絞り込んで出せる
  • 動画広告:院内の様子や診療の流れを見せられる
  • リターゲティング広告:サイト訪問者に再接触できる
  • アフィリエイト広告:提携サイトの紹介記事から患者を集める
  • ポータルサイト広告:診療科で探す人の比較に載る
媒体 届く相手・配信面 費用の形 規制上の扱い
リスティング広告 検索した人(検索結果) クリック課金 限定解除の要件1を満たさない
ディスプレイ広告 200万以上のウェブサイト・動画・アプリの閲覧者 クリック課金・インプレッション単価 バナー広告として要件1を満たさない
SNS広告 年齢層・地域で絞った利用者 入札(結果の単価目標・ROAS・入札価格上限) 医療機関のアカウントの投稿も広告になり得る
動画広告 YouTubeとGoogle動画パートナーの視聴者 広告視聴単価(30秒視聴で発生) 映写・電光によるものも対象媒体
リターゲティング広告 過去にサイトを訪れた人 ディスプレイ広告と同じ 健康のデリケートな情報では広告主が選んだオーディエンスを使えない
アフィリエイト広告 提携サイトの読者 成果に応じた報酬 アフィリエイターも規制の対象
ポータルサイト広告 診療科で医療機関を探す人 掲載枠の性質で限定解除の可否が分かれる

リスティング広告:受診先を探している人に届く

リスティング広告は、症状や診療科で検索している、受診先を探している最中の人に直接届く媒体です。Googleで検索されたときに広告オークションを経て検索結果に表示され、費用はクリックされたときに発生するクリック課金です。実際のクリック単価はオークションで決まり、設定した上限より低くなることがあります。

いま受診先を決めようとしている人に届くため、新患の獲得に直結しやすい一方、規制上は書ける範囲が狭い媒体です。検索結果のスポンサー表示は限定解除の要件1を満たさないため、広告文もリンク先も広告可能事項の範囲に収めます。出稿の具体的な進め方と費用感は、クリニックのリスティング広告を解説した記事で詳しく扱っています。

ディスプレイ広告:症状を自覚し始めた層に広く表示される

ディスプレイ広告は、Google広告を掲載できる200万以上のウェブサイト・動画・アプリを配信面として、検索の手前にいる層へ広く表示できる媒体です。まだ受診先を検索するまでには至っていないものの、症状を自覚し始めて情報を集めている人との接点を作れます。

課金にはクリック課金(CPC)とインプレッション単価(CPM)の2つの形があり、特定のコンテキスト・オーディエンス・地域を指定して表示先を絞れます。規制上の扱いはリスティング広告と同じ側です。バナー広告は限定解除の要件1を満たさないため、書ける内容は広告可能事項の範囲に限られます。

SNS広告:地域と年代を絞り込んで出せる

SNS広告は、年齢層と地域(国・都道府県・市区町村・郵便番号)を指定して、診療圏内の狙った層に配信を絞り込める媒体です。入札の方式は、結果の単価目標、ROAS、入札価格上限から選びます。診療圏が半径数キロに収まるクリニックにとって、郵便番号の単位まで配信先を絞れることは、予算を無駄にしないうえで実務的な利点です。

規制の面では、広告として出稿するものだけでなく、アカウントの発信そのものが医療広告になり得る点に注意が必要です。院や院長が特定でき、受診に誘う内容であれば、個人アカウントの投稿も広告として扱われます。

SNSの違反事例は事例解説書の第2章にまとまっています。出稿する広告のクリエイティブと日々の投稿は、同じ点検に通す前提で運用を設計する対象です。

動画広告:院内の様子や診療の流れを見せられる

動画広告は、YouTubeの動画とGoogle動画パートナーのインストリーム面に配信され、院内の雰囲気や診療の流れを映像で伝えられる媒体です。課金は広告視聴単価で、30秒間視聴されたか、30秒経つ前に操作されたときに費用が発生します。

受診をためらう理由が「どんな場所か分からない」という不安にある場合、文字よりも映像のほうが院内の様子を伝えやすいのは確かです。ただし、映写・電光によるものも医療広告の対象媒体に含まれるため、動画の内容には静止画の広告と同じ規制がかかります。

動画の違反事例も事例解説書の第2章が扱っています。制作費をかけて作る媒体だからこそ、公開後に差し替えの指導を受けないよう、絵コンテの段階で規制の点検を挟んでおきたいところです。

リターゲティング広告:サイト訪問者に再接触できる

リターゲティング広告は、過去に自院のサイトを訪れた人へ、ディスプレイ面などで再び広告を表示する仕組みです。利用には、サイト・アプリへのGoogleタグの追加とオーディエンスの作成が要ります。

ただし、医療の分野ではこの仕組みに強い制限があります。健康にかかわる立ち入った情報を扱う広告では、配信先をあらかじめ指定する出し分けが使えません。一度サイトを見た人を追いかける配信そのものが成立しない場合があるため、この媒体を予算の前提に置く前に、扱う診療の内容がこの制限に当たるかどうかを確かめておくと無駄がありません。

アフィリエイト広告:提携サイトの紹介記事から患者を集める

アフィリエイト広告は、提携サイトの紹介記事から読者を誘導し、成果に応じて報酬を支払う形の媒体です。ブログなどで紹介して成果報酬を受け取るアフィリエイターも、医療広告の規制の対象に含まれます。

違反があれば、依頼した医療機関もアフィリエイターと一緒に指導の対象になります。また、費用を負担して載せてもらった体験談・記事は、誘引性があるものとして広告に当たります。

記事の形をとっていても、報酬の発生する紹介は広告としての点検が必要です。提携先が書く原稿を院が確認する体制を作れないのであれば、この媒体は選ばないほうが安全です。

ポータルサイト広告:診療科で探す人の比較に載る

ポータルサイト広告は、診療科や地域で医療機関を探して比較している人の検討の場に、自院を載せられる媒体です。医療機関を検索できるサイト・ポータルサイトも医療広告の規制との関係で問題になり得ます。違反があったときは、運営会社にも是正命令・罰則が及ぶことがあります。

書ける内容の土台は他の媒体と同じで、広告可能とされた事項の外は何人も書けません。なお、公的な仕組みである医療機能情報提供制度の対象事項は、専門外来を除き原則として広告できます。

掲載を申し込む前に、その枠でどこまで書けるのかを運営会社に確かめておくと、原稿の作り直しを避けられます。診療科名や所在地といった基本情報の掲載であれば、枠の性質にかかわらず広告可能事項の範囲に収まるため、まず基本情報から始めるのも1つの進め方です。

クリニックが出せるオフライン広告の種類

オフラインの媒体は、いずれも診療圏の生活動線に沿って届き、限定解除の対象に挙げられていない前提で使います。書ける内容は広告可能事項の範囲に収めつつ、商圏の世帯・駅の利用者・高齢層といった届けたい相手で媒体を選びます。

  • チラシ・ポスティング:開業時に商圏へ一斉に配れる
  • 看板:来院動線上で繰り返し目に入る
  • 交通広告:通勤・通学の生活圏で見られる
  • 新聞広告:折込と紙面で高齢層に届く
  • デジタルサイネージ:駅前や商業施設で映像を流せる
媒体 届く相手 費用の形 規制上の扱い
チラシ・ポスティング 商圏の世帯 1部あたりの単価(印刷費は別) 限定解除の該当媒体に挙げられていない
看板 来院動線上の通行者 掲出場所と期間 屋外広告物法と自治体の条例により許可が必要な場合がある
交通広告 通勤・通学の利用者 駅ランクと広告サイズ、7日を1期 限定解除の該当媒体に挙げられていない
新聞広告 60代・70代に届きやすい 広告のサイズ(段) 記事風広告も規制の対象
デジタルサイネージ 駅の改札周辺・自由通路の通行者 柱数・面数・掲出期間・放映分数 電光・映写によるものも対象媒体

チラシ・ポスティング:開業時に商圏へ一斉に配れる

チラシのポスティングは、開業時に商圏の世帯へ一斉に自院を知らせられる媒体で、費用は1部あたりの単価で決まります。単価の例は、A4以下で4.5円からです(税抜)。

地域によって単価は変わり、神戸市中央区の例では8円、東京23区でA4サイズを軒並みに配る例では6.0円となっています(いずれも税抜)。配布エリアの区分は都道府県単位です。

まだ自院を知らない世帯に、診療圏の地理に沿って届けられることが、開業期にこの媒体が選ばれる理由です。規制上は、チラシ・パンフレットの類がダイレクトメール・ファクシミリを含めて対象媒体に当たります。

同じ紙の媒体でも、患者の求めに応じて送るパンフレットは限定解除の要件1を満たし得るため、一斉に配るチラシとは扱いが分かれます。刷り直しを避けるためにも、印刷する前の原稿の段階で、基本情報の範囲に収まっているかの点検が欠かせません。

看板:来院動線上で繰り返し目に入る

看板は、駅から院までの動線上で毎日繰り返し目に入る媒体です。ポスター・看板は、プラカードや建物・電車・自動車に記載されたものを含めて医療広告の規制の対象です。

一度掲出すれば長期間出続けるため、通院圏で暮らす人への刷り込みには向く一方、内容の更新がしにくい媒体でもあります。掲出の時点で書ける範囲へ収めておくことが、後の差し替えの手間を防ぎます。

医療法とは別の規制もかかります。屋外広告物は屋外広告物法と自治体の条例の対象で、掲出に自治体の知事の許可が必要な場合があります。設置場所を決める前に確かめたいのが、所在地の条例です。

交通広告:通勤・通学の生活圏で見られる

交通広告は、通勤・通学で毎日同じ駅・同じ路線を使う人に、生活圏の中で繰り返し見てもらえる媒体です。電車・自動車に記載された広告物も医療広告の規制対象に含まれます。

料金の単位は、駅ランクごとの区分と、7日を1期とする掲出期間です。同じ期間でも、駅ランクと広告のサイズによって料金が変わります。

最寄り駅の利用者に平日毎日接触できるという性質は駅前立地のクリニックと相性がよく、掲出する駅の選び方がそのまま届く相手の選び方でもあります。具体的な金額の目安は、後の費用の見出しにまとめました。

新聞広告:折込と紙面で高齢層に届く

新聞広告は、60代・70代に届きやすい媒体です。総務省の調査では、世の中のできごとについて信頼できる情報を得るための利用メディアとして、60代・70代では新聞がインターネットを上回っています。高齢の患者層が中心の診療科では、Web広告よりも接点を作りやすい選択肢です。

新聞・雑誌その他の出版物は医療広告の規制対象媒体で、料金は広告のサイズ(段)で決まります。なお、費用を負担して記事の形で載せてもらう記事風広告も規制の対象です。取材記事の体裁であっても、費用を払って載せたものには広告としての点検が要ります。

デジタルサイネージ:駅前や商業施設で映像を流せる

デジタルサイネージは、駅の改札周辺や自由通路などに設置された画面で、映像を週単位で放映できる媒体です。料金を動かす要素は、柱数・面数・掲出期間・放映分数です。

紙のポスターと近い場所に、映像で出せる媒体です。規制の面では、電光によるもの・映写によるものが対象媒体に含まれるため、放映する内容には他の媒体と同じ基準がかかります。動きのある映像でも、書ける範囲は広告可能事項に収める必要があります。

参考:
総務省情報通信政策研究所「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)」
国土交通省「景観:屋外広告物制度の概要」

クリニックの広告にかかる費用の目安

媒体ごとに費用の決まり方が違い、比べる軸は新患1人を得るのにかかった費用に置くため、金額の目安と、費用の形をあわせて押さえます。金額はいずれも税抜で、各社が公開している料金から取得したものです。

表の金額は目安づくりの入り口であり、出稿の際には各社の最新の料金で確かめる前提の数字です。

  • リスティング広告はクリック単価と予算で月額が決まる
  • チラシは印刷部数と配布エリアで費用が変わる
  • 駅看板は掲出場所と期間で料金が動く
  • 費用対効果は新患1人を得るのにかかった費用で見る
媒体 費用の形 目安額
リスティング広告 クリック課金(1か月の予算÷30.4=1日の平均予算)
チラシのポスティング 1部あたりの単価+印刷費(最低1万枚から) 4.5〜8円(税抜)
駅ポスター 駅ランク×規格×7日を1期 B0サイズでSランク84,000円、Gランク6,400円(税抜)
デジタルサイネージ 柱数・面数・掲出期間・放映分数 1週間で80,000〜168,000円

リスティング広告はクリック単価と予算で月額が決まる

リスティング広告の課金はクリック課金(PPC)で、広告のクリックに対して費用が発生します。月額の考え方はシンプルで、1か月の予算を30.4で割った金額が1日の平均予算です。先に月の上限を決めてから、1日あたりに割り戻す形で運用できます。

実際のクリック単価は毎回のオークションで決まり、入札単価を含む6つの要素で結果が変わります。入札単価は、1回のクリックに支払う上限額として自院が決める値です。

単価の水準は診療科と地域の競合状況に左右されるため、固定の相場としてではなく、予算の枠を決めて始める媒体として捉えるのが実態に合う考え方です。運用の詳細はクリニックのリスティング広告を解説した記事にまとめています。

チラシは印刷部数と配布エリアで費用が変わる

チラシのポスティング単価は1部あたり4.5〜8円(税抜)が公開料金の目安で、配布する地域とプランで変わります。A4以下・エリアAで4.5円、神戸市中央区で8円、東京23区・A4サイズ・軒並み配布で6.0円という例が公開されています(いずれも税抜)。

金額を見るときの注意点が3つあります。最低ロットの設定があること(あるプランでは1万枚から)、配布料金に印刷費が含まれないこと、そして料金の時点です。

単価表の時点は事業者によって異なり、直近の改定が2022年3月のものもあります(金額は2026年7月時点)。見積もりの際は最新の料金表で確かめてみてください。

駅看板は掲出場所と期間で料金が動く

同じB0サイズ・同じ7日間でも、料金はSランク駅で84,000円、Gランク駅で6,400円です(いずれも税抜・2026年7月時点)。駅ランクによって10倍以上の差が出ます。料金の設定単位は駅ランクとポスターの規格ごとで、掲出期間は7日を1期とします。

区分は、駅ランクがSからGまでの7段階、規格がB0・B1・B2の3種類です。規格の寸法は、B0がタテ1030×ヨコ1456mm、B1がタテ1030×ヨコ728mm、B2がタテ728×ヨコ515mmです。

駅を1ランク下げてサイズを保つのか、同じ駅で期間を延ばすのかといった配分も、この区分を前提に組み立てられます。乗降の多い駅ほど高く、同じ予算でも掲出できる場所と期間が変わるため、ターゲットにする駅の規模と予算のバランスで掲出場所を選びます。

費用対効果は新患1人を得るのにかかった費用で見る

媒体をまたいで費用対効果を比べる軸は、新患1人を得るのにかかった費用、つまりコンバージョン単価(CPA)です。CPAは、コンバージョンにかかった総費用を、その件数で割って算出します。医療機関の広告では、問い合わせや予約の数をコンバージョンとして数えるのが一般的です。

Web広告では、Googleタグを追加するとコンバージョンを記録できます。獲得単価の目標は、媒体ごとの入札の設定に反映して運用に落とせます。

月にいくら使ったかではなく、新患1人あたりいくらかかったかで見るのが、媒体ごとに続けるかやめるかを決める近道です。チラシとリスティング広告のように費用の形が違う媒体どうしでも、新患1人あたりの費用に直せば同じ基準で並べられます。

クリニックの開業時に進める広告の順序

開業前後の広告は、書ける範囲が広い媒体から順に整えると無駄がありません。最初に整えるのはホームページで、限定解除の4要件を満たせば、開業時に使う媒体の中で最も広く情報を載せられます。

  1. ホームページの開設(限定解除の4要件を満たす形にする)
  2. Googleビジネスプロフィールの登録(無料でマップと検索の見え方を管理)
  3. 内覧会の告知(説明会で使うスライド・口頭の説明も広告規制の対象)
  4. チラシの配布(限定解除の対象外のため広告可能事項の範囲に収める)
  5. リスティング広告の開始(広告文もリンク先も広告可能事項の範囲)

ホームページの次はGoogleビジネスプロフィールです。マップと検索での自院の見え方を無料で管理でき、営業時間・ウェブサイト・電話番号・地域を指定して表示できます。費用をかけずに整えられる2つを先に済ませておくと、後から出す広告の受け皿ができます。

3番目以降は告知と集患の施策です。内覧会・説明会・相談会で使うスライドやビデオ、口頭の説明も医療広告の規制対象に含まれるため、当日の資料も広告と同じ基準で点検します。チラシは限定解除の対象外とされているため広告可能事項の範囲に収め、リスティング広告は検索結果のスポンサー表示が要件1を満たさないため、広告文とリンク先の両方を同じ範囲に収めます。

なお、診療所を開設したときは、開設後10日以内に都道府県知事へ届け出ます(医療法第8条)。これは広告とは別の開設手続ですが、開業期にあわせて必要になるため、順序の中で押さえておきたい項目です。開業準備は工事や採用と並行して進むため、この5段を予定表に落としておくと、広告だけが後回しになる事態を避けられます。

クリニックの広告を外注する代理店の選び方

広告の制作・運用を外注する場合も、規制対応の責任は院の外に出せません。広告は医療機関等が自らの意思で行うものとされており、外注していても、広告の内容が規制に触れたときは、依頼した院が代理店と一緒に指導の対象になります。

外注先を選ぶときの確認項目は次の5つです。

  • 医療広告ガイドラインへの対応実績(違反があれば代理店も指導の対象になる)
  • 支援範囲(広告文の作成だけか、リンク先ページの点検まで含むか)
  • 料金体系と契約条件
  • 同じ診療科での実績
  • レポートの頻度と、表現の点検を誰が最終確認するか

見積もりを比べる段階でこの5項目を質問リストとして渡せば、各社の対応の差をそのまま比較材料にできます。

代理店やアフィリエイターの側にも、掲載する広告の内容が法と指針に反していないかを確かめる責任があります。命令が出る段階まで進んだ場合、代理店・雑誌社・新聞社・放送局への命令はその代表者に宛てられ、医療機関以外の作成者・掲載者にも任意の調査と指導が及びます。

つまり、規制を知らない外注先を選ぶことは、院と外注先の双方にとってのリスクです。確認項目の1つ目に対応実績を置いているのは、この理由によります。

判定に迷う表現の相談先としては、都道府県・保健所設置市・特別区の窓口があり、広告を出す側への相談支援が定められています。行政の窓口と外注先の双方を使い分けながら、表現の最終確認だけは院に残す体制が現実的です。確認を院長が担うのか、事務の責任者に任せるのかまで決めておくと、出稿のたびに判断が止まりません。

クリニックの広告の点検はクリニック集客相談室へ

ここまでの点検を進めても、規制に触れるかどうかの判定に迷う表現は残りやすいところです。その確認を、私たちクリニック集客相談室にお任せいただけます。

  • 薬機法・医療広告ガイドラインに精通した専任チームによる表現の確認
  • Web広告からSEO・MEOまでを一本化した集患支援
  • サイトと広告の現状を洗い出す無料集患診断

無料集患診断で確認する3項目と、申し込みの条件は次のとおりです。

  • Webサイトの改善点
  • SEO・MEOの課題
  • 広告運用の見直し
  • 初回相談無料、2営業日以内に返信

薬機法・医療広告ガイドラインに精通した専任チームによる表現の確認

薬機法・医療広告ガイドラインに精通した専任チームが、すべての制作物・広告クリエイティブを確認します。「No.1」「効果保証」「Before/After比較」などのNG表現は、チェックリストで制作の段階から排除しています。

過去に医療広告の指摘を受けたことがある場合も、現在の広告とサイトの法規制チェックから改善対応まで、一括でお任せいただけます。この記事で解説した8つの類型と限定解除の要件を、自院の表現に1つずつ当てはめる作業をご自身で抱え込む前に、ぜひ一度ご相談ください。

Web広告からSEO・MEOまでを一本化した集患支援

広告の運用だけでなく、集患に関わる施策をまとめてお任せいただけます。組み合わせるのは5つの施策です。

MEO対策、SEO対策・医療コンテンツマーケティング、Web広告、Instagram・TikTok・LINE集患、ホームページ最適化・予約導線改善です。施策ごとに別の会社へ依頼する手間なく、集患の全体を一本化できます。

MEO対策では、Googleビジネスプロフィールの情報最適化、口コミ返信のテンプレート提供、口コミ数を増やす施策までを行います。Web広告は、医療広告の審査基準を踏まえてクリエイティブを制作するため、審査落ちを抑えて新患獲得を始められます。

対応する診療科は、内科・外科・皮膚科・整形外科・歯科・美容クリニックなど、ほぼすべての診療科です。全国に対応しており、訪問は東京・大阪・名古屋・福岡を中心に、その他の地域はオンライン・電話でご支援します。

サイトと広告の現状を洗い出す無料集患診断

無料集患診断で確認するのは、Webサイトの改善点、SEO・MEOの課題、広告運用の見直しの3つです。初回のご相談は無料で、2営業日以内にご返信します。強引な営業は行いませんので、診断の結果を確かめてから、その先をゆっくりご検討いただけます。

公開している支援事例は、千葉県の歯科医院(院長とスタッフ7名・開業3年以上)の1件です。この医院では、施策開始前に月間50名だった集患数が5か月後に150名へ増え、その間の広告費は20万円でした。自院の広告表現が規制の範囲に収まっているかどうかとあわせて、サイトと広告の現状をまず無料で確かめてみてください。

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まとめ:クリニックの広告は8類型と媒体の範囲を確かめてから出す

クリニックの広告は、禁止されている8つの類型に当たる表現がないか、そして媒体ごとに書ける範囲に収まっているかを確かめてから出すものです。

この記事の6項目の点検を上から順に通せば、出稿前の確認は一通り済みます。広告に当たるかの判定から始めて、媒体、広告可能事項の範囲、8つの類型との照合、限定解除の要件、記載の更新までを1件ずつ確かめます。

虚偽・比較優良・誇大の3類型は、事実かどうかだけでなく誤解を与えるかどうかで判定されます。体験談と説明のない治療前後の写真は、内容が正しくても形式で禁止される類型です。

そして、限定解除が使えるのはホームページなど患者が自ら求めて見る媒体だけで、チラシ・看板・リスティング広告では書ける範囲が広告可能事項に限られます。違反への対応は任意の調査から始まり、命令・罰則・公表へと段階的に重くなるため、指導の段階で直すことが院を守ります。

判定に迷う表現が残ったら、自己判断のまま出稿へ進まず、専門家への確認で決着させることをおすすめします。

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株式会社ロックビルでは「クリニックの広告完全ガイド|種類・費用相場・医療広告ガイドライン対応と診療科別の成果設計」について紹介しています。併せてご覧ください。

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